脱毛全身のやり方
患者さんは、乳腺のしこりに気づいてから一年以上放置してあり、癌が皮層の上に顔を出し、くずれて悪臭をにおわせていました。
胸壁にがっちりくっついた乳癌は、触れてみると微動だにしません。
しかも、周囲の皮層には多数の皮層転移があり、わきの下の服嵩リンパ節にも硬いリンパ節が触知し、明らかな転移とわかります。
なぜ、ここまで放置してあったかというと、自分は癌だということを信じて、もう命がないと思ってあきらめていたのだそうです。
しかし、進行した癌があまりにもくさいため、もう自分の最後の時だと思って、病院で死を迎えようと思って来たと言われました。
お話を伺ってている間中、ず−つと泣いておられたのをたいへん印象深く覚えております。
ここまで進行すると私たちの手術治療だけでは治すことは困難です。
これは助からないだろうと誰もが思いました。
そこで、まず放射線治療と比較的副作用の少ない抗癌剤の投与を行って、経過を見ることにしました。
患者さんには毎日の回診の時に、前向きに励ましていきましたが、顔を会わせても泣いているばかりです。
放射線治療や化学療法は副作用として食欲不振、白血球減少、全身倦怠感、脱毛などがあげられます。
治療前から精神的に落ち込んで食事がのどを通らない状態だったので、抗癌剤を早期に中止して、放射線療法のみ続行いたしました。
その結果、癌はどんどん小さくなり、皮層は引きつれて、乳房の形はなくなりました。
しかし、奇跡的に命は迷っても病院を転々としないとりとめ、完治したと考えられました。
このように外科的処置に固守することなく行なった治療が、自分の医者としての人生を考える上で、貴重な経験となったことは言うまでもありません。
みなさんも、手術が必要といわれた場合、どこかに逃げ道があるかもしれませんので、ぜひ、いろいろ調べてみるといいでしょう。
同じ病気でも、病院によって治療方針が違う場合があります。
私の患者さんで、病院それぞれの治療法が違うことにより、混乱してしまった女性がいました。
その女性は初め視覚障害により大学病院の眼科を訪れたのですが、そこでは緑内障と診断され、点滴入院が必要だと言われました。
ところが担当した医師が若かったため不安になり、念のために別の有名私立病院でも診てもらったところ、そこでは手術が必要と診断されたのです。
心配になったその患者さんはホーム・ドクターである私のところへ相談を持ちかけました。
そこで私は別の大きな病院の専門医を紹介したのですが、その病院では手術治療が必要と言われ「手術がいやなので手術をしないで治してくれる病院を紹介してくれ」と、また戻ってくる始末でした。
この患者さんには大変苦労したことを記憶しています。
注意しなければならないのは、こうして病院を転々としているうちに、どこの病院からも半ば相手にされないような状態になってしまうこともあるということです。
そして患者さん自身も不安や迷いが精神的なストレスとなり、不眠症、高血圧、胃腸障害を起こしてしまうことあり、病気にもよくない影響を与えます。
大事なことは、あれこれ迷わずに自分自身がいちばん信頼する医師の治療方針を信じて、それに従うこと。
生きては帰れない病院。
こと病院についての悪い噂は、尾ひれ、背びれがついて、とんでもない評判になることがあります。
ある中規模の私立病院があったのですが、そこは一旦入院してしまうと、まず生きては帰ってこられない、という悪名高い病院でした。
その病院は患者さんがどういう状態になろうとも、まず大病院へは紹介しません。
ほとんどその病院で患者を長い間留まらせ、あくまで自分たちの裁量で治療をしてしまいます。
そしてあろうことか、癌ではない患者に癌だと偽り手術をしていたりもするのです。
ある患者さんがその病院から逃げ出し、私の病院に来たことがありましたが、その患者さんは肛門癌と言われ、人工肛門が必要だと診断されたとのこと。
その病院で手術をするようにと強く勧められたのですが、どうしても人工肛門はいやだったので、病院と喧嘩して退院されたそうです。
そこで、私のいた病院に来られたのですが、よく検査をしてみても、癌細胞は発見できませんでした。
結局、彼の病気は少し肛門狭窄が強い単なる「切れ痔」だったのです。
手術は肛門の括約筋という筋肉を切断して終わり、二週間後には元気に退院されました。
同業者の悪口になってしまうので、あまり書きたくはないのですが、ここまで極端ではなくても、「知らぬは患者ばかり」という悪徳病院が皆無とは言えません。
東京近郊にある救急病院では、簡単な交通事故で運ばれてくる救急患者に、普通なら考えられない検査を受けさせたりして、高額の請求をするので、「高くつく病院」ということで有名です。
この病院に運ばれると一日ですむような怪我を一週間も入院させたりするので、損害保険会社からマークされています。
交通事故の場合、たいていは保険でカバーされるので、被害者や加害者も治療費に無頓着なことが多いのです。
週休二日の発達した現在では、病院のサービスも土曜・日曜には十分に受けることはできません。
そこで、老人病院において頻繁に起こる事実があります。
そのほとんどは、必要以上に長く患者さんを留まらせる病院の場合ですが、医師が手薄になる週末の前、金曜日の午後になると、手のつけられないような患者さんを大きな病院へ送り込み、自分のところは週末を楽にするのです。
病院の経営という面からは、ベッドを開けておくことは在庫をかかえているのと同じです。
そのため、重症の患者さんでもついつい引き受けてしまいがちです。
重症の患者さんはふつうに歩行や食事のできる患者さんの何倍も手がかかります。
それゆえ、職員の数も比較的多い平日ならなんとか対応できても、職員の頭数の少ない土曜、日曜日には十分には目が届きません。
ましてや急に症状が悪化してしまうと、患者さんの命にも関わってきます。
そこで、医者の頭数の多い大病院へ、お願いしますと送ってこられます。
そのような重症患者さんを受ける側の大病院の担当医は、週末の自由時間を、突然現れた重病人のために拘束されることになります。
同じことは病院の中でも起こります。
内科の患者さんでも、腹膜炎や胃や腸に穴があいた(穿孔と呼びます)ような患者さんや、胆嚢に強い炎症がある患者さんが、外科に紹介されることが多いのも金曜日でした。
理由は週末にこのような患者さんの様態が急に悪化しては、内科では対処できないためです。
さあ週末だと気持ちが楽になっていた私たちも、いきなり重症患者さんがこられると困ってしまいます。
高齢者の手術とその危険性。
そこで私たちは、この現象を「魔の金曜日」と呼んでいて、金曜日になるとこのような患者さんが病院のどこかにいないかどうか聞いて回ったものでした。
世界一長寿国である我が国では、今後ますます高齢者が増えつつあり、高齢者が手術を受ける機会が増えています。
一般に手術を受けることをためらうことの一因に、患者さんの年齢が関係することがあります。
例えば「この病気はどうしても手術が必要です」と申し上げたら、本人ばかりでなく、家族も「もう歳が歳だから、手術は受けさせたくない」とおっしゃることがよくあるのです。
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